時折耳にする「アメリカでは野球が人気ない」という声。それは本当に事実なのでしょうか?
日本でささやかれるこの噂に、私も興味を持ちました。そこでこの問題を調べてみました。MLBの試合では未だ熱い声援が飛び交い、スタンドはファンで埋め尽くされていますが、一方で視聴率や若者の関心度に関する統計は、かつての栄光を影で泣いているようにも見えます。このギャップは何を意味しているのでしょうか?
「アメリカの野球人気は本当にない?内外の声を検証してみました」では、数多くのデータ、専門家の意見をもとにアメリカにおける野球の実際の人気を明らかにします。
アメリカで野球の人気ないというのはホント!?
スポーツリーグ収益ランキングから見るアメリカ野球(MLB)の人気
アメリカにおいて野球の人気が低迷しているとの声もありますが、実際には多くのファンに支持されている伝統的なスポーツです。NFLなど他のリーグと比較して視聴者数に差があるものの、収益ランキングを見るとMLBは依然として堅調な数字を保っています。
プロスポーツリーグの収益ランキングを見ると、各リーグがどのように位置づけられているかが明確になります。以下は、収益における各リーグのランキングとその主な収益源についての解説です。
世界のスポーツリーグ収益ランキング
ランク | リーグ | 収益 |
---|---|---|
1 | ナショナルフットボールリーグ (NFL) | $16 billion |
2 | メジャーリーグベースボール (MLB) | $10 billion |
3 | ナショナルバスケットボールアソシエーション (NBA) | $8 billion |
4 | インディアンプレミアリーグ (IPL) | $7 billion |
5 | イングリッシュプレミアリーグ (EPL) | $5.3 billion |
6 | ナショナルホッケーリーグ (NHL) | $4.8 billion |
7 | ラ・リーガ (La Liga) | $4.5 billion |
8 | ブンデスリーガ (Bundesliga) | $4.3 billion |
9 | セリエA (Serie A) | $2.3 billion |
10 | UEFAチャンピオンズリーグ (UCL) | $2 billion |
収益の源泉
各リーグの収益源泉は、テレビ放映権、チケット販売、グッズ販売、スポンサーシップ、そしてデジタルメディアと多岐にわたります。
NFL
- テレビ放映権: 一試合あたりの放映権料が最も高価
- スタジアム収益: 熱心なファンベースに支えられたチケット売上
- スポンサーシップとマーチャンダイズ: 強力なブランド価値
MLB
- テレビ放映権: 地方局との契約を含む複数年契約
- チケット販売: 162試合のロングシーズンが確実な収益をもたらす
- マーチャンダイズ: 伝統的なファン層によるグッズ購入が安定した収入源
NBA
- テレビ放映権: 国内外での放映権が大きな収益
- グローバルマーケット: 中国など海外市場での収益拡大
- マーチャンダイズとデジタルコンテンツ
NHL
- テレビ放映権: カナダとアメリカでの放映権料
- チケット販売: 一部の地域での高い人気
- スポンサーシップとマーチャンダイズ
MLS
- テレビ放映権: 成長中のリーグとしての放映権料増加
- スタジアム収益: 新しいスタジアム建設による収益増
- マーチャンダイズとスポンサーシップ
これらの数字と収益源は、アメリカにおけるスポーツの人気と経済的重要性を示しています。特にMLBは、アメリカの文化と結びついた歴史あるスポーツとしての位置を保ちながら、根強く地域に根付いたファン層を開拓しています。各リーグがどのように収益を生成し、その人気を維持、または拡大しているかを理解することは、スポーツビジネスにおける深い洞察を提供します。
MLBの収益は多くのプロスポーツリーグの中でも未だに上位に位置しており、テレビ放映権、チケット販売、グッズ販売などから安定した収入を確保しています。これは野球がまだまだアメリカ国内で広く親しまれている証拠です。
アメリカのTV視聴者ランキングにおける野球の位置
Revies.orgによるプロスポーツリーグのテレビ視聴者数に関するデータは、スポーツの人気を測る上で非常に重要な指標です。特にメジャーリーグベースボール(MLB)は、地方の街々で特に人気があり、地域コミュニティにおいても中心的な役割を担っています。以下は、テレビ視聴者数の観点からMLBの位置づけを、他の主要スポーツリーグと比較しながら詳細に解説した内容です。
テレビ視聴者数によるスポーツリーグの比較
- ナショナルフットボールリーグ(NFL): 1位
- 平均視聴者数: 約1,700万人/試合
- 主要イベント: スーパーボウル(Super Bowl)は1億人以上の視聴者を獲得
- ナショナルバスケットボールアソシエーション(NBA): 2位
- 平均視聴者数: 約150万人/試合
- プレーオフとファイナル: 視聴者数が顕著に増加
- メジャーリーグベースボール(MLB): 3位
- 平均視聴者数: 約700万人/試合
- 地方都市での人気: 試合ごとの地方局での視聴者数が特に高い
順位 | スポーツリーグ | 回答% |
---|---|---|
1 | アメリカンフットボール, NFL (National Football League) | 65% |
2 | バスケットボール, NBA (National Basketball Association) | 51% |
3 | ベースボール, MLB (Major League Baseball) | 42% |
4 | アメリカンフットボール, NCAA College Football | 30% |
5 | バスケットボール, NCAA College Basketball (Men’s and Women’s) | 25% |
6 | オートレーシング, NASCAR (National Association for Stock Car Auto Racing) | 24% |
7 | ホッケー, NHL (National Hockey League) | 20% |
8 | オートレーシング, F1 (Formula 1) | 17% |
9 | 格闘技, UFC (Ultimate Fighting Championship) | 17% |
10 | 格闘技, Bellator MMA (Bellator Mixed Martial Arts) | 13% |
11 | バスケットボール, WNBA (Women’s National Basketball Association) | 12% |
12 | サッカー, MLS (Major League Soccer) | 12% |
13 | バスケットボール, NBA G League (NBA Development League) | 12% |
14 | オートレーシング, IndyCar (IndyCar Series) | 11% |
15 | 格闘技, WWE (World Wrestling Entertainment) | 11% |
16 | ゴルフ, PGA (Professional Golfers’ Association) | 10% |
17 | バスケットボール, WNBA (Women’s National Basketball Association) | 9% |
18 | 格闘技, AEW (All Elite Wrestling) | 9% |
19 | 格闘技, WBA (World Boxing Association) | 8% |
20 | オートレーシング, NCAA College Baseball | 8% |
MLBの視聴者数と地方都市での人気
- 地方都市でのMLBの人気:
- ニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees): 地元での平均視聴者数が最も多い
- ロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers): 西海岸で最も人気のあるチーム
- MLBの地域貢献:
- 地域社会への経済的影響: 観光客の増加や地域ビジネスへの好影響
- 社会貢献活動: 若者のスポーツ参加促進や教育プログラムの支援
MLBは全米にわたってファンを持ち、特に家族連れや野球を長く愛する世代からの支持が厚いことが伺えます。テレビ放映権の地方局との契約により、全国的に均一ではないものの、特定の地域で非常に高い視聴者数を誇っているのです。
地方都市では、MLBのチームが地域のアイデンティティと密接に結びついており、その結果として地域での視聴率が高い傾向にあります。これらのデータは、MLBがアメリカのスポーツ文化の中で引き続き重要な位置を占めていることを示しています。
アメリカ人が普段からフォローしているスポーツ
statista.comの「Which Sports Do Americans Follow?/アメリカ人はどのスポーツをフォローしているのか」では以下のような結果調査が示されています。
- アメリカンフットボール (Football, NFL) – 74.5%のアメリカのスポーツファンがフォローしています。
- バスケットボール (Basketball, NBA) – 56.6%がフォロー。
- ベースボール (Baseball, MLB) – 50.5%がフォロー。
- ボクシング (Boxing) – 23.4%がフォロー。
- ホッケー (Hockey, NHL) – 22.1%がフォロー。
- サッカー (Soccer, MLS) – 21.6%がフォロー。
- ゴルフ (Golf) – 19.7%がフォロー。
- 総合格闘技 (MMA) – 16.7%がフォロー。
- テニス (Tennis) – 15.5%がフォロー。
- モータースポーツ (Motorsports) – 14.6%がフォロー。
このデータは2021年7月から2022年6月にかけて7,962人のアメリカ成人を対象に行われた調査に基づいています。最も人気のあるスポーツはアメリカンフットボールであり、3人に2人以上がフォローしていることがわかります。バスケットボールとベースボールも人気が高く、それぞれがフォローしているファンの割合が半数を超えています。
一方、伝統的なスポーツとされるボクシング、ホッケー、サッカーは、約20%から25%の間の人気であり、ゴルフや総合格闘技、テニス、モータースポーツはそれに続く人気を示しています。
野球はアメリカにおけるプロスポーツの中で非常に高い人気を誇っています。全体の50.5%ものスポーツファンがメジャーリーグベースボール(MLB)をフォローしており、これはバスケットボール(NBA)に次いで3番目に多い割合です。
アメリカンフットボール(NFL)が圧倒的な人気を占める中、MLBが半数以上のファンに支持されていることは、アメリカの文化においてベースボールがいかに根付いているかを示すものでしょう。
観客動員数ランキングでMLBを探る
こちらのwikipediaの記事「Top leagues in average attendance」からの表では、平均観客数に基づく世界のトップスポーツリーグをリストアップしたもので、シーズン全体での総観客数が100万人を超え、平均観客数が20,000人を超えるリーグのみが含まれています。
リーグ | スポーツ | 国 | シーズン | チーム数 | 試合数 | 総観客数 | 平均観客数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
メジャーリーグベースボール | ベースボール | USA and Canada | 2023 | 30 | 2,430 | 70,747,365 | 29,114 |
日本プロ野球 | ベースボール | Japan | 2022 | 12 | 858 | 25,070,169 | 29,219 |
ナショナルフットボールリーグ | アメリカンフットボール | United States | 2022 | 32 | 272 | 18,821,367 | 69,389 |
プレミアリーグ | サッカー | England and Wales | 2022–23 | 20 | 380 | 14,960,957 | 40,217 |
ブンデスリーガ | サッカー | Germany | 2022–23 | 18 | 306 | 13,155,894 | 42,993 |
リーグごとにシーズン、チーム数、ゲーム数、合計観客数、平均観客数が列挙されており、各スポーツが国内外でどれほどの観客動員力を持っているかが示されています。特にフォーミュラ1はイベントごとの平均観客数が非常に高いことが際立っており、NFLがアメリカ国内で最も観客動員数が多いスポーツイベントであることが分かります。サッカーリーグに関しては、ヨーロッパのリーグが上位にランクインしており、ドイツのブンデスリーガとイングランドのプレミアリーグが特に高い平均観客数を記録しています。
メジャーリーグベースボール(MLB)は、アメリカとカナダを対象とする30チームから成るリーグで、2023年のシーズンには合計2,430試合が行われ、合計観客数は約7,074万人に達しました。この数字は、MLBが北米で非常に人気があることを示しており、1試合あたりの平均観客数は約29,114人です。これは、アメリカ国民にとってベースボールが依然として国民的スポーツであり、各試合が地域社会において重要なイベントとなっていることを反映しています。
アメリカで野球は人気がないと言われる背景
野球の黄金時代:過去の野球人気を振り返る
「アメリカでのスポーツ視聴率の歴史」というSpectrum Theoryの記事では、過去数十年にわたるアメリカの主要スポーツの人気の変遷について詳しく分析しています。特にアメリカンフットボール(NFL)、ベースボール(MLB)、バスケットボール(NBA)が焦点となっています。NFLは1970年代からアメリカで最も人気のあるスポーツとなり、一方でかつての国民的娯楽であったベースボールは、テレビの普及と共に視聴率が低下しました。
MLBについては、1978年のワールドシリーズが視聴率のピークでしたが、1980年代には25~35%の視聴率低下が見られました。90年代にはステロイド時代の一時的な視聴率上昇を除き、引き続き視聴率が減少しました。
一方、NBAは80年代と90年代に特にマイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズの人気により、時にはNBAファイナルの視聴率がMLBのワールドシリーズを上回ることもありました。2000年代にはNBAも視聴率が減少しましたが、MLBほどではなく、一部の年を除きMLBが視聴率で優位に立っていました。
メジャーリーグベースボール(MLB)は、かつてアメリカで最も人気のあるスポーツとして君臨していましたが、現在では人気ランキングで3番目に位置しています。これは、一部で「野球は人気がない」と言われる原因の一つかもしれません。しかし、この事実をもって野球の人気が完全に失われたわけではありません。
実際、MLBは依然としてアメリカのスポーツシーンにおいて高い人気を保っています。NFLやNBAなど他のスポーツに視聴率で追い越されたとはいえ、MLBは多くの熱心なファンを持ち、アメリカ文化の中で重要な位置を占め続けています。このように、MLBが3位に落ち着いた現在も、スポーツとしての魅力と人気は健在であると言えるでしょう。
野球人気の衰退?視聴者の年齢層に着目して
この表は2006年-2016年におけるテレビ視聴者の中央値の年齢の変化を表した表です。Magna GlobalによるNielsenおよびU.S. Censusのデータ分析に基づいています。
スポーツ | 2000年 | 2006年 | 2016年 |
---|---|---|---|
PGAツアーチャンピオンズ | NA | 59 | 64 |
PGAツアー | NA | 59 | 64 |
フィギュアスケート | 54 | 59 | 64 |
LPGA | NA | 59 | 63 |
競馬 | 51 | 56 | 63 |
ATP | 51 | 56 | 61 |
モンスターエナジーナスカーカップシリーズ | NA | 49 | 58 |
プロロデオ | 51 | 53 | 57 |
MLB | 52 | 52 | 57 |
WNBA | 42 | 49 | 55 |
WTAツアー | 58 | 63 | 55 |
オリンピック | 45 | 50 | 53 |
カレッジフットボール | 47 | 48 | 52 |
カレッジバスケットボール(男子) | 44 | 48 | 52 |
NFL | 44 | 46 | 50 |
ボクシング | 45 | 47 | 49 |
NHL | 33 | 42 | 49 |
UFC | NA | 34 | 49 |
アクションスポーツ | 31 | 33 | 47 |
EPL | NA | NA | 43 |
NBA | 40 | 40 | 42 |
MLS | NA | 39 | 40 |
国際サッカー | NA | 35 | 39 |
リーガMX | NA | 32 | 39 |
「スポーツTV視聴者の高齢化傾向」と題された記事では、メジャーリーグベースボール(MLB)のテレビ視聴者が高齢化している傾向が指摘されています。Street & Smith’s Sports Business JournalとMagna Globalのデータによると、2006年から2016年の間にMLBの視聴者の平均年齢は52歳から57歳に上昇し、18歳未満の視聴者は全体のわずか7%に留まっています。他のスポーツと比較しても、MLBの視聴者は比較的高齢であり、若い世代を引き付けるのが難しい状況にあることが示唆されています。
MLBの状況分析:
- MLBは他のスポーツと比較しても視聴者の年齢層が高い傾向にあります。
- 18歳未満の視聴者の割合が低く、若い世代の関心を引くのが課題となっています。
- スポーツ全般の視聴者が高齢化する中で、MLBも同様の傾向を示しており、今後の視聴者層の拡大に向けた対策が求められています。
このような状況は、MLBが直面する重要な課題であり、特に若い世代へのアピールやデジタルプラットフォームへの対応が重要となります。若年層との接点を増やし、より魅力的な視聴体験を提供することが、MLBの長期的な人気維持には不可欠と言えるでしょう。
まとめ
アメリカにおける野球の人気は、多角的なデータを通して見ると、依然として高い水準にあります。特にメジャーリーグベースボール(MLB)は、アメリカ文化の重要な一部として位置づけられ、多くのファンに支持され続けています。世界のスポーツリーグ収益ランキングにおいてMLBは$10 billionの収益で第2位にランクインし、テレビ放映権、チケット販売、グッズ販売といった収益源泉から安定した収入を確保しています。これらの数字は、アメリカでの野球の人気と経済的重要性を強く示しています。
さらに、テレビ視聴者数ランキングではNFLやNBAに次いでMLBが3位となっており、特に地方都市での人気が際立っています。地域社会への経済的影響として、MLBチームは観光客の増加や地域ビジネスへの好影響をもたらしていることが指摘されています。また、観客動員数においてもMLBは北米で非常に高い動員力を誇り、2023年のシーズンでは平均観客数が約29,114人に達しました。
しかし、MLBが現在直面している課題もあります。特に、MLBのテレビ視聴者が高齢化している傾向があり、18歳未満の視聴者は全体のわずか7%に留まっています。これは、MLBが若い世代にとって魅力的でない可能性を示唆しており、若年層との接点を増やすことが今後の大きな課題となりそうです。スポーツ全般の視聴者が高齢化する中、MLBも同様の傾向を示しており、今後の視聴者層の拡大に向けた対策が求められています。
このように、MLBはアメリカでの高い人気を維持しながらも、新しい世代のファンを獲得するための挑戦に直面しています。デジタルプラットフォームへの対応や若年層へのアピール、魅力的な視聴体験の提供など、MLBの長期的な人気維持のための戦略が重要になるでしょう。
以下に記事のポイントをまとめます:
- MLBの人気: MLBはアメリカで依然として高い人気を誇り、多くのファンに支持されている。
- スポーツリーグ収益ランキング: MLBは$10 billionの収益で世界のスポーツリーグ収益ランキングで2位に位置している。
- 収益源泉: MLBの収益はテレビ放映権、チケット販売、グッズ販売など多岐にわたる。
- TV視聴者ランキング: MLBは視聴者数ランキングでNFL、NBAに次いで3位となっており、特に地方都市での人気が高い。
- 地域社会への影響: MLBチームは地域社会において経済的影響を与え、地域ビジネスや観光に貢献している。
- ファンの割合: アメリカ人の約50.5%がMLBをフォローしており、これはNFL、NBAに次ぐ人気。
- 観客動員数: MLBは北米で高い観客動員数を誇り、2023年のシーズンでは平均観客数が約29,114人に達した。
- 野球の黄金時代: 過去にはMLBがアメリカで最も人気のあるスポーツだったが、テレビの普及と共に視聴率が低下。
- 視聴者の年齢層: MLBの視聴者は比較的高齢であり、若い世代の関心を引くのが課題。
- 長期的な挑戦: MLBは若年層との接点を増やし、魅力的な視聴体験を提供することで長期的な人気を維持する必要がある。